今思うと、世界一周に出発する前にはまあまあの費用と時間をかけて何種類もの予防接種を受けました。
それまで意識をしたことはありませんでしたが、世界には多くの感染症が存在すること、訪れる国や地域によっては感染をする可能性があることを知ったからです。
念願の世界一周中に妙な感染症に感染をして旅行を中断せざるを得ない状況にはなりたくない、減らせるリスクは減らしたい、そんな想いから自分が訪れるエリアと接種すべきワクチンについて調べまくった記憶があります。
それではインドはどうなのでしょう?
私の元にはインドに関する質問が多く寄せられますが、その中から今回は“インド旅行に予防接種は必要かどうか”ということについて書きます。すでにまとめられた記事もあるかとは思いますが、この件に関しての私なりの考えを書いておきます。
目次
国の機関が発信していること
まずは国の機関がどんなことを発信しているか確認をしてみましょう。
外務省ホームページに書かれていること
外務省のホームページでは“インド入国にあたり日本人に義務づけられている予防接種はありません”とされています。接種しなければインドへ渡航ができないというワクチンは現時点ではないということです。(2019/05時点)
でも続けて“成人では,A型肝炎,B型肝炎,日本脳炎,破傷風,腸チフス,狂犬病に対して免疫を付けておくべきです”とも書かれています。
義務ではないですが、”A型肝炎,B型肝炎,日本脳炎,破傷風,腸チフス,狂犬病”の予防接種を勧めています。
在インド日本国大使館のホームページに書かれていること
在インド日本国大使館のホームページでは、“インド赴任やインド旅行の前には以下の各予防接種をご検討ください”とされています。外務省のホームページで勧められていたワクチンと同様です。
A型肝炎 | B型肝炎 | 破傷風 | 日本脳炎 | 腸チフス | 狂犬病 | |
赴任者 | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ | ◯ |
旅行者 | ◎ | △ | △ | △ | ◎ | △ |
◎:インド赴任の際に、是非接種を受けていただきたいもの
◯:インド赴任の際に、接種が望ましいもの
△:目的地や旅行の形態に合わせて検討すべきもの
※注意:推奨される予防接種については専門家によって意見が異なる場合があります。
このようにされています。ぜひ接種を受けていただきたいとお勧めされているワクチンは赴任者・旅行者共にA型肝炎と腸チフスです。その他のワクチンは赴任者(=長期滞在者)であれば接種が好ましく、旅行者であれば目的地などによって検討してください、となっています。
感染症の種類/ワクチンの接種回数/費用
ではそれぞれのワクチンの種類を見ていきましょう。
注意:接種費用は目安です。接種する医療機関により異なります。
【A型肝炎】
*A型肝炎とは…A型肝炎は食べ物から感染する病気で、アジア、アフリカ、中南米に広く存在します。発症すると倦怠感が強くなり、重症になると1か月以上の入院が必要となる場合があります。途上国に長期(1か月以上)滞在する人におすすめするワクチンです。特に60歳以下の人は抗体保有率が低いため、接種をおすすめします。
*接種回数…ワクチンは2~4週間隔で2回接種します。6か月以上滞在するのであれば6か月目にもう1回接種すると約5年間効果が続くとされています。
*接種費用…7,000円/回(税抜)
【B型肝炎】
*B型肝炎とは…以前は輸血や医療従事者の注射針による針刺し事故など血液を介した感染が問題とされていましたが、現在ではB型肝炎の母親から生まれる新生児期を中心とした感染と、思春期以降の性行為を通じた感染の2つが主な原因となっています。
一般に健康な成人の感染では一過性感染が多く、急性肝炎の経過をとるものと不顕性感染となるものがあります。一過性感染例では劇症化して死亡する例(約2%)を除くと、多くはおよそ3か月で肝機能が正常化します。
*接種回数…ワクチンは4週間間隔で2回接種し、さらに、20~24週間後に1回接種します。
*接種費用…5,700円/回(税抜)
【破傷風】
*破傷風とは…破傷風菌は世界中の土壌の至る所に存在し、日本でも毎年患者が発生しています。破傷風は傷口から感染するので、冒険旅行などで怪我をする可能性の高い人におすすめするワクチンです。特に、途上国ではけがをしやすく、命に関わることもあるので、接種を検討してください。
*接種回数…破傷風ワクチンは1968年(昭和43年)から始まった3種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日せき)に含まれていますので、定期予防接種で破傷風・ジフテリアワクチンを12歳の時に受けていれば、20代前半位までは免疫がありますので接種は不要です。その後は、1回の追加接種で10年間有効な免疫がつきます。現在、小児の定期接種では、ジフテリア・百日咳・ポリオとの4種混合ワクチン(DPT-IPV)、ジフテリア・百日咳との3種混合ワクチン(DPT)、ジフテリアとの2種混合ワクチン(DT)が用いられます。
*接種費用…3,400円/回(税抜)
【日本脳炎】
*日本脳炎とは…日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されることによって起こる重篤な急性脳炎で、死亡率が高く、後遺症を残すことも多い病気です。流行地(東アジア、南アジア、東南アジア)へ行く人におすすめするワクチンです。
*接種回数…ワクチンは1~4週間間隔で2回接種し、1年後追加接種を1回します(基礎免疫が完了)。基礎免疫の完了後は、1回の接種で4~5年間有効な免疫がつきます。
*接種費用…7,000円/回(税抜)
【腸チフス】
*腸チフスとは…サルモネラの一種であるチフス菌によって引き起こされる感染症です。一般のサルモネラ感染症とは区別され、チフス性疾患と総称される。感染源は汚染された飲み水や食物などです。潜伏期間は7〜14日間ほど。衛生環境の悪い地域や発展途上国で発生して流行を起こす伝染病であり、南アジアを中心にアフリカ、東アジア、東南アジア、中南米、東欧、西欧などで世界各地で発生が見られる。
*接種回数…接種後2週間で予防としての抗体価がつきます。1回の接種で約3年の抗体が持続します。
*接種費用…8,800円/回(税抜)
【狂犬病】
*狂犬病とは…狂犬病は、発病すればほぼ100%が死亡する病気です。海外では、オセアニアなど一部を除きイヌだけでなくキツネ、アライグマ、コウモリなどの動物に咬まれることによって感染する危険性が高く、長期滞在、研究者など動物と直接接触し感染の機会の多い場合や、奥地・秘境などへの渡航ですぐに医療機関にかかることができない人におすすめするワクチンです。
*接種回数…ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに6か月から12か月後に3回目を接種します。3回のワクチン接種後、6か月以内に咬まれた場合には0日(咬まれた日)、3日の2回の接種が必要です。また、6か月経過後に咬まれた場合には0日、3日、7日、14日、30日、90日の6回のワクチン接種が必要です。
*接種費用…12,000円/回(税抜)
インド旅行の際に予防接種は必要かどうか?
私は世界一周に出る前、アジア、アフリカ、中南米など感染症の多いエリアを長期旅行する予定だったので、ある程度必要そうな予防接種をしました。5種類合計8回のワクチンを接種するのに1ヶ月以上、約6万円の費用がかかりました。
もしもの場合に備えることはとても大事なことですが、ワクチンは期間を開けて複数回接種しなければいけないものが多く、健康保険も使えないので費用もかなりかかります。
私の個人的な意見ですが、インドの一般的な観光地を訪れる1週間程度の短期旅行の場合は予防接種の必要はないかなと思います。あくまでも私の個人的な意見ですが。
これまで各感染症の特徴を見てきましたが、主な感染源は、A型肝炎→食事、B型肝炎→性行為、破傷風→傷口、日本脳炎→蚊、腸チフス→食事や水、狂犬病→犬、ざっくり言うとこれらです。
シンプルに言うと、インドでは食事や水に気をつけて、知らない人と性行為をせず、傷ができたとしても衛生的に保つようにして、蚊に刺されないよう努力をし、犬に噛まれないようにすればいいのです。
一般的な観光地を訪れる短期旅行の場合、これらはそれほど難しいことではないと思います。いかがでしょうか。心配な方は接種が1番推奨されているA型肝炎と腸チフスの接種を検討されてもいいかもしれません。
一方で以下のような方々は推奨されているワクチンの接種をご検討された方がいいと思います。
・1ヶ月以上の長期旅行者や駐在さんなど数ヶ月・数年単位の長期滞在をされる方
・何かあった時に医療機関にすぐに行くことができそうもない田舎へ行く予定のある方
・動物と接触する可能性が高い、野外での活動が多い、など特別な活動をしながら滞在をする方
インド旅行を安全に終えるための現地対策法!
さて、先ほど申し上げたインドではこうするべし!というのをもう1度書きます。
“食事や水に気をつけて、知らない人と性行為をせず、傷ができたとしても衛生的に保つようにして、蚊に刺されないよう努力をし、犬に噛まれないようにする”
です。
予防接種を受けずとも、感染症にかからないように、そのリスクを少しでも減らすために現地で気をつけられることはあります。無防備で滞在をするのと気をつけて滞在をするのとでは全然違うと思いますので、以下のことに注意をして滞在をしてくださいね!
食事や水に気をつける!
インドでは旅行中にお腹を壊す人が多くいます。が、食あたりではなく、日本では使わない量のスパイスを使った料理が多かったり、油の量も日本食と比べてかなり使うので、お腹がビックリして反応しているというケースも多いので、極端に心配をし過ぎることはないと思います。
でも、お腹の弱い方、心配な方は衛生面に問題のなさそうなキレイなレストランで食事をするように心がけましょう。また、水は必ずミネラルウォーターを飲むようにして、生野菜など加熱をしていない料理は避けましょう。
確かに衛生面には問題があるかもしれませんが、私はインドのローカルレストランやストリートフードの中にも美味しいものがたくさんあると思うので、
インドでは食あたりに十分気をつけて食事はすべて高級レストランで摂るようにしてください!
なんていうことは言いたくはないです。
ですので、ご自身でしっかりと自分の体調をコントロールしましょう。私は神経質になりすぎるのもよくないと思います。食べたい!と思ったらその気持ちに従って挑戦してみましょう!それも旅行の醍醐味です!
野良犬には積極的に絡まない!
インドは狂犬病の犠牲者が世界で最も多い国で、年間2万人以上が狂犬病で亡くなっているそうです。インド=牛というイメージをお持ちの方は多くいらっしゃると思いますが、インド=野良犬と言っていいぐらい、インドは野良犬だらけです。基本的に日中はどの犬も暑さにバテているのか大人しく、そこら中で寝ているだけなので襲ってくるということはほぼありませんが、夜は気をつけた方がいいです。例えそれが可愛い子犬だったとしても自分から近づくことはやめましょう。
もしも吠えながら近づいてくる危険な犬がいたら、近くにいるインド人に助けを求めましょう。インド人は野良犬慣れをしているので余裕の態度で追い払ってくれると思います。
狂犬病は発症するとほぼ100%死に至るというとても怖い病気です。もしも犬に噛まれたら24時間以内に1本目のワクチンを接種する必要があります。必ずすぐに病院へ行きワクチンを接種しましょう。もしも犬に噛まれた時に24時間以内に病院へ行きワクチンを接種することが困難かもしれないというぐらい田舎や小さな町へ行く予定でしたら、事前に予防接種を受けることをオススメします。
虫除け対策を怠らない!
海外では蚊が媒介する感染症はいくつもあるので、その感染症の流行エリアへ旅行される場合蚊に刺されないように注意をするということは常識中の常識です。
私はもともとかなり蚊に刺されやすいタイプなので、いつでもどこでも虫除けにはかなり気を使っているのですが、昨年ベトナムでデング熱を発症したので説得力がなくなりました(;▽;)笑
私の場合潜伏期間から感染場所はおそらくタイかベトナムですが、インドもデング熱流行国と言えますので十分な注意が必要です。デング熱は予防ワクチンはなく、蚊に刺されないようにするしかありません。
参考までに私が使っている虫除けアイテムを2つご紹介します。
▼押すだけベープor押すだけノーマットfrom JAPAN
これはプシュっとワンプッシュすると部屋にいる蚊を駆除してくれるという優れものです。私は世界一周中はずっと携帯していましたし、今でも旅行に出るときは必ず連れていきますし、もちろん今でも家で使っています。私にとっては”ないと不安”というぐらい大切な虫除けアイテムです。
ホテルの部屋に蚊がいる!という時に蚊を仕留めるまで眠れないという状況を回避できます。ワンプッシュをすればOKです。日本のドラッグストアなどで購入ができます。小さくて持ち運びにも便利ですので、ぜひ旅行のお供に!
▼Odomos(オドモス)from INDIA
これはインドで流通している虫除けクリームです。蚊に刺される〜!と嘆いていたらインド人の友人がオススメしてくれた虫除けクリームで、私はそれ以来ずっと愛用しています。日本から虫除けスプレーなどを持って来てもいいかと思いますが、町中の薬局などで購入することができますのでぜひ。ただしインドのものは刺激が強いらしいので肌の弱い方は注意をされた方がいいと思います。歯磨き粉サイズのもので85ルピー(約140円)程度です。
まとめ
インド旅行をする際に予防接種をするかどうか、みなさんの心は決まりましたでしょうか。
私は1週間程度の短期旅行なら予防接種は必要ないかなと判断をしますが、可能性のある感染症の予防接種を全部したい人もいると思います。結局は自分がどれくらいもしもの場合に備えたいか、ということに尽きると思います。
どこの国へ行くとしても、旅行中は本当に何が起こるかわかりません。予防接種から現地でできる対策も含め、”もしもの場合に備える”ということはとても大切なことです。
そして忘れてはいけないのは海外旅行保険への加入です。
渡航される国によっては、風邪やちょっとした怪我などの受診ぐらいなら保険料よりも断然安く済む場合もありますが、現地ではどんなことが起こるかわかりません。個人で医療費を負担できないような病気や大怪我をする可能性だってあると思います。
その時に後悔をしないためにも、そして大切なご家族に迷惑をかけないためにも、海外旅行をされる際は必ず海外旅行保険に加入しましょうね!